「スペックや必需品としてモノが売れなくなった今、売るためには感情を動かせ」と、世間でというかこの国の広告周りの業界でいわれはじめたのは、90年代くらいからでしたでしょうか。
その感情を動かすために「ストーリーを語れ」などとビジネス書などで軽々しくいわれていたりするけど、「そんなカンタンに作れるかよ」と思いませんか。
<典型的なストーリーテンプレ>
- 男女が出会う
- 初めは反発しあう
- 気付いたら恋してた
- 2人の間に障害が発生
- 諦めかける
- 思い直して問題に立ち向かう
- 再びくっついてエンディング
でもね。ストーリーなんていうから「創作しなきゃ」と気張ってしまうわけで、『エピソードトーク』として事実を淡々と語るならできそうじゃないですか。
エピソードトークだってストーリーだし、充分感情を動かせるはずだ。
この記事の目次 - Contents -
ブログ文章のストーリーは二極で心を揺らせ
モテる人の特徴のひとつに「ギャップ」ってあるじゃないですか。
たとえば、見ただけで110番して警察呼びたくなるほど怖い顔した人が、子猫を愛でていたり。
肌が生白く、普段はまったく人と目を合わせられないようなビクビクしたいじめられっ子風の人が、火事の中から颯爽と子どもを助け出したり。
負と正、不安と安心、悪と善、嫌と好、そして涙と笑い。
二極の振れをみて心が動くという、ナントカ心理学のソレです。
両極端を見せられたとき、人の感情は動きやすいんですね。
ライフ・イズ・ビューティフル、リトル・ミス・サンシャイン、ラブ・アクチュアリー、フル・モンティ。
これらの映画を観たことある人はわかりますよね。
ブログの文章内におけるストーリーの作り方
ストーリー(エピソードトーク)を作るポイントですが。
たとえば
「パワーストーンを付けていたら、お金持ちになりました。」
という文章があったとしましょう。
これだけだと小学生の卒業文集レベル。
なので、これにこまかーく肉付けします。
肉付けってのは何かというと、画を描くことです。
文章で画を描くのです。
言葉を使って、読み手の脳内にイメージを映すのです。
細ければ細かいほどイメージがしやすくなります。
〈いつ〉〈どこで〉〈誰と〉〈誰が〉〈なにを〉〈どうした〉というそれぞれの内容を、できるだけ数字と固有名詞で表現し、全体を二極に。
この場合は「貧乏だったけど石のおかげで金持ちになりました」的なエピソードで構成するのです。
数字と固有名詞で表すのは、読み手がイメージしやすくなるから。
イニシャルなんかだと、人物をまったくイメージできないので使わない方がいいよね。
その他、感情を動かす二極の具体例
●乃木坂46
ブスがいないグループとして知られる乃木坂46。
とかくルックスの高さばかりが語られていますが、実は本当の魅力は〈笑いのセンス〉とその〈裏側の苦難〉とのギャップにあるといえます。
最初の『乃木坂ってどこ?』から『乃木坂工事中』へと続く看板番組内での奇想天外な発言や行動とそれをうまく拾って笑いに変換するバナナマンとの相性。
この番組は本当に名場面と名ゼリフの宝庫です。
しかし裏側では苦悩がいっぱい。
ファンならご存知、
- 2014年 2nd YEAR BIRTHDAY LIVE の「真夏、お帰り」
- 舞台『16人のプリンシパル』での葛藤、衝突、落胆、苦悩、号泣、嗚咽
- 内定を噂されていた紅白の落選
- 美彩先輩の「もしずっと選抜に選ばれることがなくても乃木坂が大好きだから」発言
- 乃木どこ最終回ドッキリでの感謝コメント
- 2015年真夏の全国ツアーオープニング映像、なーちゃんの「高山一実さん、あなたに会えてよかった」
特に最後のは、何度も観てるのに毎回 100% の確率で泣きます。大げさな表現ではなく実際に涙が出ます。
とにかく〈笑い〉と〈涙〉という二極の振り幅が大きすぎて、何かに掴まらないと立っていることができません。
●フリーライター・ハイパーメディアブロガーのだいちゃん(∀)
http://www.だいちゃん.com/
有名ブロガーであるだいちゃん(∀)の著作『1級身体障害者が「自殺」をする為に全国を旅した話』も、ノンフィクションでありながら二極に振れるストーリー。
この本のストーリーは、不安と安心との間に心をブンブン揺らされます。
- 入院中、消灯後に巡回の隙をかいくぐって行う女子たちとの交流
- 慢性腎臓病にも関わらず身体の限界まで行う長距離走の激しい練習
- 家族が病気の中での受験、猛勉強
- 生まれて初めての彼女、その邪魔をする教師
- ブラック企業での就労
- そして、自殺するための旅…
淡々とした文体が、かえってこちらをドキドキさせるのです。
ちょっと話はそれますが。
世の中、クスリや不倫、ギャンブルやホスト通いなどから抜け出せないような、ウシジマくんの債務者たちのような弱者を叩く人が多いですよね。
そういう他人を叩く人って、自分が「意思の強い立派な人間だ」という認識持っているっぽい。
でも実際にはこの世に意志の強い人間などいないし、弱者を叩く境遇にある人は、その人が立派なんではなくて《周囲に恵まれただけ》の話だということを知った方がいい。
この本のエンディングでは「自分が周囲に恵まれている」ということ、そしてその人たちへ名指しで感謝を表していますが、このシーンが一番グッときた。
だいちゃん(∀)は、ものすごく人生に誠実な人だと思いました。
最後に
ストーリーマーケティングは、大量消費される生活必需品よりも、嗜好品や高級品など情緒を絡めるサービス品に用いられることが多かったりします。
必要な情報を「すぐに知りたい」と考えている人たちに対しては、あまり長々と読ませるものだと脱落する可能性あるので。
でも目に見えないサービスが売り物である、士業やコーチやコンサルタントであれば、事例エピソードを語ればピッタリハマりそうですよ。


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